7.魔法の言葉

作家 三橋貴明氏のブログ『新世紀のビッグブラザーへ』より

 

ソリューション~魔法の言葉~ 前編

2009-12-14

 

ソリューション:元の意味は「束縛から解放されたもの」。ラテン語で「束縛から解放された」を意味する形容詞 solut(us) に名詞化語尾 -ion をつけた英語の名詞。方程式などの解。物事の解決方法。未解決という束縛状態から解放されている。 (Wikipedeiaより)

 

 現在の日本は(総選挙前から)、調査媒体により内閣支持率や政党支持率が激減するという、事実上の分裂状態に あります。そのため、選挙をすると、レガシーメディアの世論調査と、ネットの世論調査との間のどこかに結果が落ち着くわけです。8月の総選挙で、レガシー メディアの世論調査において、民主党の支持率は自民党にダブルスコアで勝っていたにも関わらず、小選挙区得票率の差は9%もなかったのはご存知の通り。
 そのときの状況により、選挙結果はレガシーメディアに近づいたり、あるいはニコ動調査に近づいたりするだけで、「両方とも正しくない」というのが真実なのだと思います。
 ところで、レガシーメディアとニコ動の世論調査には、大きな違いがあります。それは、ニコ動のユーザは、民主党に関する様々な問題(闇法案やら、経済政策の無茶苦茶振りやら)を「知った」上で、鳩山内閣を支持していないわけです。それに対し、レガシーメディア特にテレビにしか触れない人は、判断に必要な情報を充分に与えられていない可能性が高いわけです。
 とは言え、最近の「鳩山内閣への支持率の下支え」という現象には、一つ大きな特徴があります。それは、レガシーメディアに煽られ、民主党に投票してしまった人は、最近の民主政権の無茶苦茶ぶりを見ても、なかなか支持を翻すことが難しいという点です。
 なぜならば、ここまで酷い政権、政党を支持し、総選挙で投票してしまったのは、自分自身だからです。すなわち、現在の民主政権の無能ぶりの責任を負うべき人は、自分自身なのです。
 人間、誰でも責任を負うのは嫌なものです。そうである以上、現実の民主政権がどれほど酷くても、「自分を守る」ために支持を続けざるを得ない人が多いのだと思います。(皆さんの周りにも、多いでしょう?)

 

 というわけで、先日同様、その種の悩みをお抱えの方々に、最高のソリューション(解決策)となる魔法の言葉をご紹介いたしましょう。

「マスコミに騙された!」

 これで、全ては解決です。あなた方(民主に投票し、現在も支持せざるを得ない方々)は、正しい情報を与えられていなかったのです。正しい情報なしで、真っ当な判断を下すことができる人は、この世に一人も存在しません。
 また、上記二つの週刊朝日の「中吊り」を見る限り、「マスコミに騙された!」を否定できる人も、やはりこの世には存在しないと思うのです。

 

 

ソリューション~魔法の言葉~ 後編

2009-12-15

 

 ここで改めて考えてみたいのは、なぜ「投資者サイド」が09年7月-9月期に、突如(と言って構わないと思います。最初から投資を先送りするつもりなら、そもそも生産者サイドに発注はかけないでしょう)投資を先送りしてしまったのか、についてです。
 別に、今さら説明が必要とも思えませんが、8月末に総選挙があり、9月に民主党政権が誕生しました。このタイミングで「投資先送り」が発生した以上、企業(投資者サイド)が成長戦略なき民主党政権に不安を抱き、投資を手控えたと考えるのが自然でしょう。

 今さらですが、GDPとはその国の支出の合計であると同時に「所得の合計」でもあります(誰かの支出は、誰かの所得です)。企業の投資先送りによりGDPが減ると、めぐりめぐって「わたくしたちの所得」も減ってしまうわけです。
 というわけで、魔法の言葉その2

民主党政権が成立したために、我々の所得が減っている

 鳩山不況が来る? とんでもない。鳩山不況は09年9月時点から、いやもしかしたらそれ以前の選挙戦の頃から、とっくに始まっていたのです。

 

 

財政危機という「フィクション」

2009-12-24

 

 例えばマンションを購入した際に、その後、配達される新聞のチラシ広告などを見て、同じレベルの部屋が、より高い価格で売られているのを見て、
「ああ、いい買い物をしたなあ・・・
 と安心する心理状態を、認知的協和と呼びます。
 それとは逆に、同じレベルの部屋が「より安価」に売られており、「どうも、自分の買い物は失敗したぞ・・・・」と感じてしまったとき、人は認知的不協和の状態に入ります。この場合、普通の人は何か別の要素を見つけ出し、自分の行動が間違っていなかったことを証明しようとするのです。
 例えば、
「このチラシのマンションは、問題ばかり起こしているデベロッパーの物件だし・・・」
「このチラシのマンションは、確かに安いけど、周りの環境は良くなさそうだし・・・・」
 などと考え、無理やり自分を正当化しようとするのです。
 ここまでお読み頂いた方はお分かりだと思いますが、「何と言うか、凄い時代・・・ 
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10416063568.html  」でご紹介した「内閣支持率84%」という民主党支持層は、完全にこの認知的不協和状態に陥っています。
 一度、認知的不協和に陥ると、なかなかそこから抜け出すことができません。皆さんの周りにも、そういう人は多いでしょう。
 認知的不協和に陥った人々は、たとえ小沢の秘書が有罪となり、石川が逮捕され、鳩山が重加算税を徴収されたとしても(要は脱税)、懸命に「民主党政権の良いところ」を探そうとすると思います。
 そんな人たちには、先日の「魔法の言葉」をささやいてあげましょう。

あなたは悪くないんです。マスコミに騙されただけです

 この言葉を聞いたとき、認知的不協和に陥っている人たちは「自分を救う」ことが可能になります。

 もちろん「そもそもマスコミに騙されるようなあんたが悪いんだ! 海よりも深く反省し、少しは政治や社会に対する認識を高めろ!」というのは正論です。しかし「黒船来襲」時に、何が正論だの、どうあるべきだの議論している暇はないと思うのです。
 ちなみに、わたくしは評論家でも学者でもない「コンサルタント」です。企業診断の際に、たとえ自分の提案が社長に採用されなくても、結果的にその企業の業績が上がれば、全然オッケーです。同様に、何が正しかろうが、あるいは間違っていようが、結果的にみんな(日本人)がハッピーになれば、全てオッケーなのです。